「一刻も早く離婚したいのに、親権をどちらにするかで揉めていて話が進まない」というご相談は少なくありません。以前の制度では、離婚届を提出するときに親権者を決めていないと、そもそも離婚届自体が受理されませんでした。しかし、令和6年に成立した改正法の施行により、現在は、この点についても新しい選択肢が用意されています。今回はその内容をご紹介します。
これまでは「親権者が決まるまで離婚できない」のが原則だった
以前の制度では、未成年の子どもがいる夫婦が離婚する場合、離婚届に親権者を記載しなければ、役所は届出を受理してくれませんでした。そのため、離婚そのものには争いがなくても、親権をどちらにするかで話し合いが平行線をたどっていると、離婚の成立自体が長引いてしまうという問題がありました。
とりわけ、配偶者からの暴力などが背景にあり、一刻も早く法律上の関係を断ち切りたいと考えている方にとって、この「親権が決まらないと離婚できない」という仕組みは、大きな負担になっていました。
現在は、調停・審判の申立てをしていれば離婚届を出せる
改正後の制度では、親権者の指定について家庭裁判所に調停または審判の申立てをしている場合には、たとえその結論が出ていなくても、離婚届を提出できるようになっています(改正民法765条1項2号)。
具体的には、申立てをした家庭裁判所から、手続が進行中であることを証明する書類(事件係属証明書)の交付を受け、それを添えて離婚届を提出するという流れが想定されています。これにより、「離婚は先に成立させて、親権はその後も話し合いや審判で決めていく」という進め方が可能になります。
ここで押さえておきたいのは、この仕組みを使えるのはあくまで、家庭裁判所に親権者指定の調停・審判の申立てをしている場合に限られるという点です。単に「話し合いがまとまらない」というだけでは足りず、きちんと裁判所の手続に乗せておく必要があります。
申立てを途中で取り下げることには制限がかかる
この仕組みを利用して先に離婚届を出した後に、親権者指定の申立てを自由に取り下げられてしまうと、親権者が誰なのか宙に浮いたままになり、子どもの利益を害してしまいます。そのため、離婚成立前に申立てを取り下げるには、家庭裁判所の許可が必要とされることになっています。
実務上の意味・ここがポイント
①親権について争いがあっても、家庭裁判所への申立てさえ済んでいれば、離婚届を先に出すことができます。②利用するには、単なる話し合いではなく、正式な調停・審判の申立てが必要です。③申立て後に離婚が成立するまでは、申立ての取下げに家庭裁判所の許可が必要になります。
よくある質問
Q1 話し合いだけで、まだ調停を申し立てていない場合はどうなりますか?
A この新しい仕組みを使うには、家庭裁判所への正式な申立てが前提となります。話し合いが進まない場合は、早めに申立てを検討することをおすすめします。
Q2 先に離婚届を出すと、親権について不利になりませんか?
A 離婚の成立と、親権者を誰にするかの判断は別の手続として進みます。先に離婚を成立させたからといって、それだけで親権の判断が不利になるものではありません。
Q3 この制度は今すぐ使えますか?
A はい。改正法はすでに施行されており、要件を満たせば現在ご利用いただけます。具体的な進め方については、個別の状況に応じてご案内しますので、お気軽にご相談ください。
離婚と親権の手続についてご不安がある方へ
親権をめぐる話し合いが長引いて離婚そのものが先延ばしになっている場合、どのような手続を取れば状況を前に進められるか、早めに弁護士にご相談いただくことをおすすめします。中目黒さくら法律事務所では、離婚・親権に関するご相談を承っております。
※本コラムは、令和6年法律第33号による民法等の改正内容の一般的なご紹介、および現時点での実務上の見通しを示したものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご相談内容によって結論が異なる場合がありますので、具体的なケースについては弁護士にご相談ください。

