「共同親権を選べるようになったと聞きましたが、うちの場合はどちらになるのでしょうか」というご質問をよくいただきます。結論から言うと、共同親権になるか単独親権になるかは、まず父母の話し合いで決めることが基本ですが、話し合いがまとまらず裁判所が判断する場合には、決まった手順で見ていくことになります。今回は、その判断のしくみをご紹介します。
最初に見るのは「単独親権にせざるを得ない事情」があるかどうか
裁判所がまず確認するのは、そもそも共同親権という選択肢を検討する余地があるケースなのかどうかという点です。ここで、単独親権にしなければならない事情があると判断されれば、その時点で共同親権は選ばれず、単独親権に決まります。
典型的なのは、父母の一方が子どもに対して危害を加えるおそれがある場合です。子どもへの虐待が心配されるようなケースがこれにあたります。
もう一つの典型は、父母どうしの関係がこじれすぎていて、子どものために必要なやり取りすら現実的にできないと考えられる場合です。たとえば、一方から他方への暴力があり、今後も身の危険を感じさせるようなケースでは、そもそも二人で子育てについて話し合うこと自体が難しいため、単独親権とせざるを得ません。身体的な暴力に限らず、相手を精神的に追い詰めるような言動や、生活費を握って相手を経済的に締め付けるような行為が続いているケースも、同じように考えられます。
これらの事情がある場合には、それ以上細かい事情を比較検討するまでもなく、単独親権に決まります。子どもの安全や、父母間の最低限の意思疎通すら見込めない状況で共同親権を選んでしまうと、かえって子どもの不利益になりかねないからです。
そうした事情がなければ、総合的に見て判断する
これに対して、虐待のおそれや暴力といった深刻な事情が特に見当たらないケースでは、裁判所は、いくつかの観点から総合的に判断していきます。
一つは、これまで父母それぞれが子どもとどのように関わってきたかという点です。子どもの世話や教育にきちんと向き合ってきたか、子どもとの間に安定した信頼関係があるかといった事情が見られます。
もう一つは、父母どうしが、子育てについて最低限の意思疎通ができる関係にあるかという点です。ここで注意したいのは、仲の良い元夫婦である必要はないということです。頻繁に連絡を取り合ったり、友好的な関係を保ったりすることまでは求められておらず、進学先を決めるといった重要な場面で、なんとか意見をすり合わせられる程度の関係があれば足りると考えられています。第三者を間に挟んでやり取りするような形であっても、それで安定した意思疎通ができるのであれば、共同親権を否定する理由にはなりません。
そして、これら以外にも、それぞれの家庭に応じたさまざまな事情が考慮されます。子ども自身の意向や、父母の従前の話し合いの経過なども、判断材料になり得ます。
「協力できていない」というだけでは単独親権になるとは限らない
実務上、注意しておきたいのは、父母の間で意思疎通がうまくいっていないという事情だけをもって、機械的に単独親権に決まるわけではないという点です。
たとえば、子どもと同居している親が、これといった正当な理由もないのに別居親との連絡や話し合いを拒み続けているような場合、その結果として「協力関係が築けていない」状態になっていたとしても、それをそのまま理由に単独親権を認めてしまうのは適切とはいえません。協力関係が築けていない背景に何があるのかまで、丁寧に見ていく必要があります。
実務上の意味・ここがポイント
①虐待のおそれや深刻な暴力といった事情があれば、その時点で単独親権に決まります。
②そうした事情がなければ、父母それぞれと子どもとの関係や、父母間の意思疎通の可能性などを総合的に見て判断されます。
③父母が「仲良し」である必要はなく、最低限の意思疎通ができれば共同親権の余地があります。
④片方が一方的に協力を拒んでいるだけのケースでは、その事情だけで単独親権と決めつけられるわけではありません。
よくある質問
Q1 父母どちらかが「共同親権は嫌だ」と言えば単独親権になりますか?
A 一方が反対しているという事実だけで自動的に単独親権になるわけではありません。反対している理由や、実際に協力できる関係にあるかどうかなど、具体的な事情を踏まえて判断されます。
Q2 別居中に一度も連絡を取っていなくても共同親権になり得ますか?
A 連絡の頻度そのものよりも、今後、子どもの重要な事柄について意思疎通できる見込みがあるかどうかが重視されます。事情によっては、これまで連絡が少なかったことだけで否定されるわけではありません。
Q3 子ども自身の意見は考慮されますか?
A 子どもの年齢や理解の程度に応じて、子どもの意向も考慮要素の一つとなり得ます。特に年齢が上がるほど、その意向は重視される傾向にあります。
親権の判断についてご不安がある方へ
共同親権になるか単独親権になるかは、今後の子育てのあり方を大きく左右する問題です。ご自身のケースがどちらに近いのか、証拠の整理も含めて弁護士にご相談いただくことで、見通しを立てやすくなります。中目黒さくら法律事務所では、離婚・親権に関するご相談を承っております。
※本コラムは、令和6年法律第33号による民法等の改正内容の一般的なご紹介を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご相談内容によって結論が異なる場合がありますので、具体的なケースについては弁護士にご相談ください。

