「私立に行かせたい」「公立で十分」――共同親権で進学先が決まらないとき

「私立に行かせたい」「公立で十分」――共同親権で進学先が決まらないとき 親権・監護権

共同親権のもとでは、子どもの進学先は父母が共同で決めるべき事柄とされています。しかし、教育方針の違いから、私立か公立か、あるいはどの高校を受験させるかで意見が割れてしまうことは珍しくありません。今回は、進学をめぐる対立が解けないときの対応についてご紹介します。

進学をめぐる対立にはさまざまなパターンがある

典型的な対立の場面としては、私立と公立のどちらに進学させるか、中高一貫校を目指すかどうか、普通科と専門学科のどちらを選ぶか、宗教系の学校とそうでない学校のどちらにするか、志望校に不合格だった場合に就職させるか進学を続けさせるかなど、さまざまなパターンが考えられます。お子さんに障害がある場合には、特別支援学校と一般の学校のどちらに進学させるかが問題となることもありますし、すでに在学している学校を退学させて転校させるかどうかが争点になることもあります。

なお、進学先との契約(在学契約)を誰が結ぶことになるかは、進学段階によって扱いが異なります。高校への進学では、お子さん自身が契約の当事者となることが多いのに対し、幼稚園や小学校、中学校では親が契約の当事者となることもあります。もっとも、いずれの場合であっても、父母間で進学先についての意見がまとまらなければ、家庭裁判所の手続を利用する必要が生じる点は共通しています。

話し合いがまとまらなければ、家庭裁判所に判断を委ねられる

父母間で進学先についての協議が調わない場合には、家庭裁判所に対して、その進学に関する事柄について、父母の一方に単独で判断する権限を与えるよう申し立てることができます。

ここで大切なのは、入学試験や入学手続には期限があるという点です。期限に間に合わなければ、そもそも選択肢自体が失われてしまいます。そのため、対立が予想される場合は、早め早めに手続を進めておくことが重要です。

また、期限までに十分な審理を尽くすことが難しい事情がある場合には、「子の利益のため急迫の事情があるとき」にあたるものとして、父母の一方が単独で判断できることもあります。

申立ての際は「何について」判断を求めるのかを具体的にする必要がある

家庭裁判所に判断を求める際には、抽象的に「教育に関する事項」について単独で判断する権限がほしいと申し立てるだけでは足りないとされる可能性があります。少なくとも「進学」に関する事項であることを明らかにし、可能であれば志望校名まで具体的に特定した形で申し立てることが望ましいと考えられます。

もっとも、志望校名まで特定して申し立てた場合、その学校の入学試験に不合格となったときには、併願していた別の学校との契約を単独で結ぶことができなくなるおそれがある点には注意が必要です。どの程度まで具体的に特定して申し立てるべきかは、お子さんの状況や志望校の状況などを踏まえて、個別に検討する必要があります。

裁判所は「誰の希望が正しいか」を決めるわけではない

誤解されやすいのですが、家庭裁判所は、父母どちらの教育方針が優れているかを判定するわけではありません。あくまで、子どもの利益にかなう形で進学に関する判断ができるのはどちらの親かという観点から見ていきます。

具体的には、それぞれの親が、子どもの状況や希望する進学先について、必要な情報をきちんと把握しているか、そのうえで、自分の希望ではなく子どもの利益を中心に考えて判断できているかといった点が見られます。たとえば、子どもの学力や適性を顧みずに、自分の意向だけを押し通そうとしているような場合は、その点がマイナスに評価されることもあります。逆に、子どもと同居して日頃から学習面での関わりを持っている親の方が、こうした状況把握の点で有利に評価されやすい傾向があるといえます。

また、子どもの意向も重要な考慮要素です。特に年齢が上がるにつれて、子ども自身の希望はより重視される傾向にあります。父母双方の判断力に大きな差がみられない場合には、これまで教育に関する事柄をどちらが主に担ってきたかという役割分担の実情も、あわせて考慮されることがあります。

実務上の意味・ここがポイント

①進学先について協議が調わない場合、家庭裁判所に判断を求めることができます。

②入学手続には期限があるため、対立が見込まれる場合は早めの対応が重要です。期限までに審理が間に合わない急迫の事情があるときは、単独での判断が認められることもあります。

③家庭裁判所への申立ては、「教育に関する事項」といった抽象的な内容では足りず、進学に関する事項であることや、可能であれば志望校名まで、具体的に特定することが求められます。

④裁判所は、子どもの利益を中心に判断できるのはどちらの親かという観点で審理します。

⑤子ども自身の意向も、年齢に応じて重視される考慮要素です。

よくある質問

Q1 どのくらい前から手続を準備すればよいですか?

A 入学試験・入学手続の時期から逆算して、余裕をもった準備が必要です。対立が予想される場合は、早めにご相談ください。

Q2 子どもが「この学校に行きたい」と言っている場合、それが優先されますか?

A 子どもの意向は重要な考慮要素ですが、それだけで自動的に決まるわけではありません。他の事情とあわせて総合的に判断されます。

Q3 特定の学校名まで指定して申し立てる必要がありますか?

A 対立の内容によって、どの程度具体的に特定すべきかが異なります。学校名まで特定すると、不合格だった場合に他校との契約ができなくなるおそれもあるため、事案に応じた申立ての方法をご案内します。

Q4 子どもが通う予定の学校がまだ決まっていない場合でも相談できますか?

A もちろんご相談いただけます。私立・公立のどちらを軸に検討するか、中高一貫や専門学科の選択肢も含めて志望校が固まっていない段階からご相談いただくことで、対立が表面化する前に見通しを立てやすくなります。

進学をめぐる親権行使についてご不安がある方へ

進学は子どもの将来に直結する大切な選択であり、期限もあるため、早めの対応が肝心です。中目黒さくら法律事務所では、進学をめぐる親権行使のご相談を承っております。

※本コラムは、令和6年法律第33号による民法等の改正内容の一般的なご紹介を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご相談内容によって結論が異なる場合がありますので、具体的なケースについては弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)