「共同親権になったら、子どものワクチンを打たせるのにも、いちいち相手の同意が必要になるのでしょうか」というご質問をいただくことがあります。結論から言うと、日常的な事柄については、同居している親が単独で決めることができます。今回は、その線引きについてご紹介します。
「日常の行為」は単独で決めてよい
共同親権のもとでは、子どもに関する重要な決定は父母が共同で行うのが原則です。しかし、日々の生活の中で生じる、子どもに重大な影響を与えない範囲の行為については、同居している親が単独で判断してよいとされています。
具体的には、習い事を何にするかといった選択、短期間の旅行、子どもの心身に大きな影響を与えない範囲の通院や治療、季節性のワクチン接種、高校生のアルバイトの許可といった事柄が、これにあたると考えられます。日常生活の中で頻繁に判断が求められる事柄について、そのたびに相手の同意を取り付けなければならないとすると、現実的に子育てが回らなくなってしまうためです。
一方で、単独では決められない事柄もある
これに対して、子どもの居所(どこに住むか)の決定や、進学先の選択、心身に重大な影響を与える医療行為の決定など、子どもの人生を大きく左右する事柄については、「日常の行為」にはあたらないとされています。こうした事柄については、原則どおり、父母が共同で決めることが求められます。
急ぎの場合は単独で対応できる
なお、本来であれば父母の共同での判断が必要な事柄であっても、子どもの利益のために急いで対応しなければならない事情があるときは、例外的に単独で対応することが認められています。急な体調不良で心身に重大な影響を与える緊急の治療が必要になった場合などが、これにあたります。
実務上の意味・ここがポイント
①習い事の選択や短期の旅行、季節性のワクチン接種など、日常的な事柄は単独で決められます。
②進学先や重大な医療行為の決定など、子どもの人生を左右する事柄は、共同で決める必要があります。
③急を要する事情があるときは、例外的に単独での対応が認められます。
よくある質問
Q1 塾を変えるかどうかは、単独で決められますか?
A 通塾や習い事の選択は、一般的には日常の行為に含まれると考えられていますので、単独で決めることができるのが原則です。
Q2 相手が「同意していない」と言って学校とのやり取りに口を出してきたら?
A 実際の事柄が日常の行為の範囲かどうかによって対応が異なります。状況を整理したうえでご相談いただくのがよいでしょう。
Q3 緊急時に単独で対応した場合、あとから問題になりませんか?
A 子どもの利益のために急を要する事情があったといえる場合は、単独での対応が正当なものとして扱われます。事後的に状況を子どもの利益のために緊急であったことを説明できるよう経緯を記録しておくと安心です。
共同親権での判断の範囲についてご不安がある方へ
何が「日常のこと」にあたり、何が共同での判断を要するのか、実際の場面では判断に迷うことも多いと思います。中目黒さくら法律事務所では、共同親権のもとでの具体的な判断についてもご相談を承っております。
※本コラムは、令和6年法律第33号による民法等の改正内容の一般的なご紹介を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。実際のご相談内容によって結論が異なる場合がありますので、具体的なケースについては弁護士にご相談ください。

