配偶者の戸籍に「認知」の記載があったら?不貞を裏付ける強力な証拠になることも

配偶者の戸籍に 認知 の記載があったら 不貞を裏付ける強力な証拠になることも 不倫・慰謝料

配偶者に不貞を疑っていても、決定的な証拠がなかなか見つからず苦労されている方は多いと思います。しかし、もし配偶者が不貞相手との間に生まれた子を認知していれば、話は変わってきます。戸籍を取り寄せるだけで、性的関係があったことを裏付ける強力な証拠が手に入ることがあるのです。

なぜ「認知」の記載が強い証拠になるのか

認知とは、婚姻関係にない男女の間に生まれた子について、父との法律上の親子関係を成立させる制度です。認知が行われると、その子と父親との間に、法律上の親子関係が生まれます。子を持つに至った経緯を離れて、まず法律上の父子関係が生じたという事実そのものが記録として残る点に大きな意味があります。

つまり、配偶者が不貞相手との間の子を認知しているという事実は、認知の事実が戸籍という公的な記録に残ることから、通常、その子の母親との間に性的関係があったことを強く推認させる重要な証拠となり得ます。

認知の事実は、どこで確認できるのか

認知が行われると、その事実は父親の戸籍に記載されます。認知には、父親が自分の意思で届け出る「任意認知」と、父が任意に認知しない場合に、子の側から裁判手続によって認知を求める「裁判認知(いわゆる強制認知)」の2通りがありますが、いずれの方法によっても、最終的には市区町村への届出を経て、父親の戸籍にその事実が記載される点は共通しています。

配偶者の本籍地の市区町村役場(広域交付制度により、本籍地以外の窓口で取得できる場合もあります)で「戸籍全部事項証明書」(いわゆる戸籍謄本)を取得すれば、認知の記載の有無を確認できます。配偶者と同一戸籍に入っている方であれば、自分自身も戸籍の当事者として、この証明書を請求することが可能です。

実際にどのような形で記載されるのか、イメージをつかんでいただくために、架空の名前を用いた見本を挙げます(氏名・本籍等はすべて架空のものです)。

【見本】戸籍全部事項証明書のイメージ(説明用に作成した架空の例です)

本籍 ○○県○○市○○一丁目2番
氏名 架空 太郎

身分事項

婚姻
 【婚姻日】平成25年10月1日
 【配偶者氏名】架空 良子
認知
 【認知日】令和4年6月10日
 【認知した子の氏名】嘘松 健
 【認知した子の戸籍】○○県○○市○○三丁目4番 嘘松 花子

婚姻の記載と並んで「認知」という項目が設けられ、認知した年月日、認知した子の氏名、その子が入っている戸籍(本籍と筆頭者)が記載されます。子自身がこの戸籍に移ってくるわけではなく、記載されるのはあくまで配偶者本人の身分事項として、という点がポイントです。

証拠として使う際に押さえておきたいこと

認知の記載があれば、配偶者と、認知された子の母親との間に性的関係があったことは強く推認されます。認知の記載から、認知された子の氏名やその子の戸籍などを確認できる場合があります。もっとも、その情報だけで、疑っている不貞相手と子の母親が同一人物であることまで直ちに確認できるとは限りません。

また、通常は、配偶者と子の母親との間に性的関係があったことを強く推認させる事情ですが、いつからいつまで関係が続いていたのかまでは分かりません。婚姻関係が破綻した時期との前後関係が問題になる事案では、認知の記載に加えて、関係の時期を示す他の証拠も合わせて準備しておくことが望ましいといえます。

なお、認知された子自身の戸籍やプライバシーに関わる情報でもありますので、証拠として提出する際には、事案の解決に必要な範囲を超えて子の情報が明らかにならないよう、配慮した取り扱いを心掛けることも大切です。

実務上の意味・ここがポイント

写真や録音といった証拠は、撮り方や集め方によって証拠としての強さが変わってきますが、戸籍の認知の記載は、認知の事実が戸籍に公的に記録されるものであり、証拠価値を争われにくいという特徴があります。配偶者との間に、認知されたと思われる子がいるらしいという情報をお持ちの場合には、まず戸籍を確認してみる価値があります。

もっとも、これはあくまで一般的な傾向です。実際にどのような主張・立証の組み立てが適切かは、他に集まっている証拠の内容や、事案の背景によって異なります。戸籍を確認する前に、一度見通しを相談されることをお勧めします。

よくある質問

Q 配偶者の戸籍を、自分だけで取得することはできますか。

A 配偶者と同一の戸籍に入っている方であれば、戸籍の当事者としてご自身で請求することができます。本籍地の市区町村への郵送請求のほか、広域交付制度により本籍地以外の市区町村窓口で取得できる場合もあります。

Q 認知の記載があれば、それだけで不貞慰謝料を請求できますか。

A 認知の記載は、配偶者と子の母親との間に性的関係があったことを強く裏付けますが、その認知の記載だけで慰謝料請求が当然に認められるわけではありません。その母親が請求の相手方と同一人物か、性的関係が婚姻関係の破綻前にあったか、不貞相手が婚姻の事実を認識していたかなど、ほかの事情も検討する必要があります。

Q 認知届を出す前の、婚姻中の性的関係を裏付けることはできますか。

A 認知の記載自体は、通常、子の母親との間に性的関係があったことを強く推認させますが、それがいつの時点の関係によるものかは、子の生年月日や妊娠期間などから、受胎時期をある程度推測することになります。その上で不貞行為にあたるかを検討することになります。

戸籍の確認や証拠の整理にご不安がある方へ

「配偶者に認知した子がいるらしいが、どう調べればよいか分からない」というご相談も承っています。戸籍の取得方法から、確認できた内容をどう主張・立証に活かすかまで、具体的にアドバイスいたします。まずは状況をお聞かせください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)