ラブホテルの出入り写真、「1枚撮れば証拠になる」わけではない理由

ラブホテルの出入り写真、「1枚撮れば証拠になる」わけではない理由 不倫・慰謝料

不貞を疑って証拠を集めようとするとき、多くの方がまず思い浮かべるのが、相手とラブホテルなどに出入りする様子を写真に収める方法ではないでしょうか。実際、こうした写真は不貞の有力な間接証拠になり得ます。もっとも、「2人が一緒に写っている写真が1枚でもあれば安心」というわけではありません。写真の撮り方次第で、証拠としての説得力は大きく変わってきます。

なぜラブホテルの出入り写真が証拠になるのか

配偶者と不貞相手が実際に性的関係を持っている瞬間を写した写真を入手できることは、現実にはほとんどありません。そのため実務で重要になるのが、性的関係そのものではなく、その存在を推測させる周辺の状況を写した写真です。中でも代表的なのが、性行為をすること以外の使われ方が想定しにくいラブホテルといった施設に、配偶者と不貞相手が2人そろって出入りする様子を撮影した写真です。こうした施設の性質を踏まえれば、そこに2人で出入りしていたという事実自体が、性的関係の存在を裏付ける有力な間接事実になります。

押さえておきたい2つのポイント

同じように出入りの様子を撮影した写真であっても、証拠としての価値には差が出ます。実務上、特に意識したいのが次の2点です。

第一に、写っている人物が誰なのか、後から見て分かる写真であることです。遠すぎたり、暗すぎたり、後ろ姿だけだったりすると、「本人かどうか分からない」という反論を受けやすくなります。配偶者と不貞相手、双方の顔がある程度判別できる形で写っていることが望ましいといえます。

第二に、1枚だけでなく、施設に入る場面と出る場面の両方を押さえることです。入る場面だけでは、「たまたま前を通りかかった」「人を待っていただけ」「ラブホテルに入ったが5分で出てきたので性行為はしていない」といった弁解の余地を残してしまいます。入退店の両方を時間の経過とともに記録できていれば、施設内に一定時間とどまっていたことまで示すことができ、証拠としての説得力が格段に高まります。

このほか、旅行先で宿泊施設の室内にいる場面を写した写真や、相手の自宅に出入りする場面を同じように入退の2場面で撮影した写真なども、状況によっては同様の推認力を持ちます。プリクラのような親密さを示す写真だけでは性的関係の推認までは難しいのが通常ですが、他の事実関係と重なり合うことで、意味を持ってくることがあります。

証拠として提出する段階での注意点

写真を法廷に証拠として提出する際には、実務上、証拠説明書などを通じて、いつ、どこで、何を撮影したものかを裁判所と相手方に明示することが求められています。行き当たりばったりに撮影するのではなく、撮影の日時・場所を後から説明できるよう、記録として残しておくことが実務上重要になります。

また、近年はスマートフォンなどのデジタル機器で撮影することがほとんどですが、こうした画像は簡単に加工できてしまうと受け取られやすいため、証拠として出した際に「編集されたのではないか」と指摘されるリスクがあります。撮影したファイルを不用意に上書き・編集せず、元データを別途バックアップしておけば、こうした疑義への備えになります。

実務上の意味・ここがポイント

「証拠になりそうな写真を撮った」というだけで安心せず、誰が写っているかを判別できるか、時間の経過を示せているかという2つの視点で、手元の写真を見直してみることが大切です。この2点が押さえられているかどうかで、同じ出来事を撮った写真でも、裁判での評価は大きく変わり得ます。

もっとも、これはあくまで一般的な傾向です。実際にどのような証拠が必要かは、他にどのような証拠が揃っているか、相手方がどのような反論をしてくるかなど、個別の事案によって異なります。証拠収集を始める前に、見通しを相談しておくことをお勧めします。

よくある質問

Q ラブホテルに入る場面の写真が1枚だけあります。これだけで不貞の証拠として十分ですか。

A 1枚だけでは、偶然居合わせただけといった反論を受ける余地が残ります。可能であれば、出てくる場面の写真も合わせて確保し、2人が施設内に一定時間とどまっていたことを示せるようにしておくとよいでしょう。

Q 顔がはっきり写っていない写真しかありません。証拠として使えませんか。

A まったく使えないわけではありませんが、人物の同一性について反論を受けやすくなります。他の写真や状況証拠と組み合わせて、人物を特定できるようにしておくことが望ましいといえます。

Q スマートフォンで撮った写真は、証拠として不利になりますか。

A スマートフォンでの撮影自体が不利になるわけではありません。ただし、編集を疑われて証拠価値を争われないよう、撮影したファイルには手を加えず、別途バックアップを取っておくことをお勧めします。

証拠の集め方にご不安がある方へ

「どのタイミングで、どう撮ればよいのか分からない」というご相談は少なくありません。想定されている状況を伺ったうえで、証拠としての価値を高めるための撮影・保管の方法について、具体的にアドバイスいたします。まずは状況をお聞かせください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)