子ども名義の預金、離婚したらどうなる?――「名義」より「中身」で判断されるしくみ

子ども名義の預金、離婚したらどうなる?――「名義」より「中身」で判断されるしくみ 財産分与

「子どもの名前になっている口座なのだから、財産分与とは関係ありませんよね」というご質問をよくいただきます。お気持ちはよく分かるのですが、結論から言うと、名義が子どもになっているというだけでは、財産分与の対象から外れません。裁判所が見ているのは、口座の名義ではなく、そのお金が実質的に誰のものかという中身の部分です。今回は、子ども名義の預金がどのような考え方で仕分けされるのかをご紹介します。

「名義」は決め手にならない

結論を先に言うと、子どもが未成年のうちに作られた口座については、そこに入っているお金は、両親の収入から積み立てられたものと考えるのが基本の姿勢です。口座の名義こそ子どもになっていても、実際にお金を出して積み立ててきたのは親であることがほとんどだからです。そのため、財産分与の場面では、こうした口座は、実際に管理してきた親(監護している側の親)の財産として扱われ、分与の計算に含めるのが原則とされています。

「子どものために貯めてきたのに」と感じる方も多いと思いますが、実務上は、その口座が本当に子ども自身のお金なのか、それとも実質的には夫婦のお金なのかを、一つひとつ丁寧に見極めていくことになります。

見極めのカギは「誰のお金が、どう口座に入ったか」

この見極めにあたって、実務上とくに重視されるのが、次の点です。

  • そのお金を実際に口座に入れたのは誰か(親なのか、子ども自身なのか、それとも祖父母などの第三者なのか)
  • 通帳や届出印を、これまで誰が管理してきたか
  • 入金の時期や金額から、何のための入金だったと考えられるか

以下では、この視点に沿って、代表的な場面を見ていきます。

子ども自身のお金は、分与の対象になりません

子どもがもらったお年玉やお小遣い、アルバイト代などを、子ども自身のお金としてコツコツ貯めていた場合は、話が変わってきます。この場合は、名義だけでなく実質的にも子どものお金といえるため、財産分与の対象からは外れます。

もっとも、「これは子どものお年玉です」と口で言うだけでは足りません。対象から外したいと主張する側が、それを裏付ける証拠を示す必要があります。通帳の入金履歴を見て、たとえば1月やお盆の時期にまとまった額が入金されているなど、お年玉や季節のお祝い金を貯めていたと推測できる記録があれば、有力な手がかりになります。

祖父母などからの贈与も、子ども固有の財産になる

子どもの将来のためにと、祖父母が子ども名義の口座にお金を入れてくれていた、というケースもよくあります。夫婦以外の第三者から子ども自身に向けて贈られたお金は、子ども固有の財産として、財産分与の対象からは外れます。

高松高等裁判所平成9年3月27日判決でも、祖父母が孫の将来を考えて贈与のために送金していたという事案について、そのお金は孫自身の固有財産にあたると判断されています。

こうした事情を裏付ける証拠としては、祖父母名義の口座から子ども名義の口座へ直接振り込まれた記録が、最も分かりやすいものになります。直接の振込記録が残っていない場合でも、祖父母側の口座からお金が引き出されたタイミングと金額が、子ども名義の口座への入金と近いことを示せれば、間接的な手がかりとして役立ちます。そのほか、口座を開設したのが祖父母であること、通帳や届出印を祖父母が管理してきたことなども、贈与だったことを裏付ける事情になります。

出どころが混ざっている口座は、割合で見られることもある

実際には、お年玉やお小遣いと、親が積み立てたお金が同じ口座に混ざっていることも珍しくありません。この場合、その口座を子ども固有の財産と夫婦の財産のどちらに位置づけるかは、それぞれの原資がどの程度の割合を占めているかによって変わってきます。

親が入金した分がごく一部にとどまり、大半が子ども自身のお年玉やお小遣いといえるような口座であれば、口座全体を子ども固有の財産として扱うことが多くなります。逆に、親の積立が中心を占めているような場合には、口座全体を財産分与の対象に含めて考えることもあります。東京高等裁判所令和5年12月21日判決でも、口座に含まれる原資の性質を踏まえたうえで、口座全体を財産分与の対象とする判断が示されています。

子どもがすでに成人している場合

ここまでの話は、子どもが未成年である間に作られた口座を前提としています。子どもがすでに成人している場合は考え方が変わり、子ども名義の預金は、原則として財産分与の対象には含まれません。ただし、実質的には親のお金であり、単に子どもの名前を借りているだけと分かるような場合には、夫婦の財産として扱われることもあります。

実務上の意味・ここがポイント

①子ども名義の預金が財産分与の対象になるかどうかは、名義ではなく、実質的に誰のお金かによって決まります。

②未成年の子ども名義の口座は、原則として夫婦の財産として扱われ、財産分与の対象に含まれます。

③子ども自身のお年玉・お小遣いや、祖父母など第三者から直接贈られたお金は、子ども固有の財産として対象から外れますが、これを主張する側が証拠で裏付ける必要があります。

④夫婦のお金と子ども自身のお金が混ざっている口座は、どちらの原資が中心かによって、口座全体の扱いが変わります。

よくある質問

Q1 子ども名義の口座にあるお金は、すべて財産分与の対象外になりますか。

いいえ。名義が子どもであっても、実際に入金していたのが夫婦であれば、財産分与の対象に含まれるのが原則です。対象から外れるのは、子ども自身のお年玉やお小遣いを貯めていた場合や、祖父母など第三者から子ども自身に贈られたお金である場合など、実質的にも子どものお金といえるケースに限られます。

Q2 祖父母から子どもの口座に振り込んでもらったお金があります。財産分与から外してもらうには、何が必要ですか。

祖父母名義の口座から子ども名義の口座へ直接振り込まれた記録があると、もっとも分かりやすい証拠になります。直接の記録がなくても、祖父母側の出金のタイミング・金額が子ども口座への入金と近いことや、口座の開設・管理を祖父母が行っていたことなど、複数の事情を積み重ねて示せれば、子ども固有の財産と認めてもらえる可能性があります。

Q3 子どものお年玉やお小遣いと、私たち夫婦が積み立てたお金が、同じ口座に混ざっています。どうなりますか。

夫婦が入金した分がごくわずかであれば口座全体を子どものお金として扱うことが多く、逆に夫婦の積立が中心であれば口座全体を財産分与の対象とすることがあります。どちらの原資が中心かによって、口座全体の扱いが決まるのが基本的な考え方です。

Q4 子どもがすでに成人しています。子ども名義の口座は財産分与の対象になりますか。

原則として対象になりません。ただし、実質的には親のお金であり、名前だけを借りている口座であることが分かる場合には、夫婦の財産として扱われることがあります。

財産分与での子ども名義の預金の扱いについてご不安がある方へ

子ども名義の口座がいくつあるか、誰がどのように入金・管理してきたかといった事情を伺ったうえで、財産分与の対象になりそうかどうかを整理いたします。まずは状況をお聞かせください。

※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。子ども名義の預金が財産分与の対象になるかどうかは、口座の成り立ちや証拠の有無など、個別の事情によって異なり、必ずこのとおりになるとは限りません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)