離婚届を勝手に出されてしまわないか不安です――離婚届不受理申出制度とは

離婚届を勝手に出されてしまわないか不安です――離婚届不受理申出制度とは 離婚手続き

「相手が、自分に無断で離婚届を出してしまうのではないか」——別居中や離婚の話し合いが難航している方から、こうした不安を伺うことがあります。実はこの不安には根拠があります。協議離婚の届出は、形式的な要件さえ満たしていれば、本人の意思に基づかない届出であっても受理されてしまう可能性があるからです。今回は、無断で離婚届が出されてしまうリスクと、それを防ぐための離婚届不受理申出制度について解説します。

なぜ、無断で離婚届が出されてしまうことがあるのか

協議離婚の届出を受け付ける戸籍係は、原則として届書の形式的な要件を審査するものであり、署名が本当に本人によるものか、本人に離婚の意思があるかどうかを実質的に審査する仕組みにはなっていません。市区町村によっては、届出人が本人でない場合に備えて、届出を受理したうえで本人に通知する本人確認制度を設けているところもありますが、この通知は受理した後に行われるため、偽造の署名による離婚届であっても、いったんは受理されてしまうことがあります。実務上は、二重に婚姻関係にある配偶者の一方が、もう一方に無断で離婚届を提出し、不貞の相手と婚姻届を出してしまうといった例も見られます。こうして離婚届が受理されてしまった場合、戸籍上の離婚の記載を是正するためには、離婚無効確認の調停・訴訟等の手続が必要になることがあります。なお、離婚の効力自体は有効で、親権者の指定部分だけが無効となるケースもあり、この場合は親権者指定協議無効確認の訴えを提起することになります(東京高判平成15年6月26日判時1855号109頁)。

離婚届が勝手に出されることを防ぐ「離婚届不受理申出制度」

こうした事態を防ぐために設けられているのが、離婚届不受理申出制度です(戸籍法27条の2第3号から5号)。あらかじめこの申出をしておくと、その後に離婚届が提出された際、戸籍係は届出人が本人かどうかを確認し、本人であることが確認できなければ受理しません。また、こうした届出が提出されたこと自体が、申出をした本人に通知される仕組みになっています。

申出の手続きで押さえておきたいこと

離婚届不受理申出ができるのは本人だけで、代理人による申出は認められていません。申出書の書式は全国共通で、市区町村によってはWEBサイトからダウンロードできるところもありますが、申出をする際は、原則として本人が市区町村役場の受付窓口に直接出向いて手続きをする必要があります。その際には、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど、写真付きの本人確認書類の提示が求められます。疾病その他やむを得ない事由があって来庁できない場合には、公証人の認証を受けた書類による郵送での申出が例外的に認められることがありますが、この場合も代理人を介した手続きは認められていません。窓口での手続きが可能かどうかも含め、具体的な取扱いは本籍地の市区町村役場に確認することをお勧めします。申出は本籍地以外の市区町村役場でも提出できますが、本籍地以外の役場に提出した場合は、その役場で謄本が作成されたうえで本籍地の役場へ原本が送付されるため、本籍地に直接提出する場合より時間がかかります。急いでいる場合は、できる限り本籍地の窓口に申出をしておくとよいでしょう。

申出の効力はいつまで続くのか

離婚届不受理申出は、一度行えば、申出を取り下げるか、申出をした本人自身が離婚の届出を行うまで、効力が続きます。また、裁判離婚が成立した場合や、申出人が死亡した場合にも、離婚届不受理申出の効力は失効します。

申出を取り下げる場合の手続き

考えが変わって、やはり離婚することにした、あるいはそもそも申出をする必要がなくなったという場合は、不受理申出を取り下げることができます。取下げをするには、申出人本人が市区町村役場の窓口を訪れ、不受理申出の取下書と本人確認書類を持参して手続きを行う必要があります。もっとも、申出人本人が窓口に出向いて自分で離婚届を提出するのであれば、事前に取下げの手続きをしておかなくても、取下げがあったものとして扱われ、離婚届は受理されます。つまり、自分自身が離婚することに納得して届出をする場面では、わざわざ別途取下げの手続きを踏む必要はありません。

実務上の意味・ここがポイント

①協議離婚の届出は、戸籍係が実質的に審査する仕組みになっていないため、相手に無断で提出されてしまうリスクがあります。

②離婚届不受理申出をしておけば、その後に提出された離婚届について、戸籍係が本人確認をしたうえで受理の可否を判断する仕組みが働きます。

③申出は原則として本人が窓口で直接行う必要があり、代理人による申出はできません。

④一度申出をすれば、取り下げるか自分で離婚届を出すまで効力が続くため、相手との関係が不安定な間は、申出をしたままにしておくことができます。

よくある質問

Q すでに離婚の話し合いを始めています。離婚届不受理申出をしておくべきですか。

A 相手が単独で離婚届を提出してしまうリスクが少しでも心配な場合は、早めに申出をしておくことをお勧めします。申出をしていても、本人が窓口に出向いて自分自身の離婚届を提出することの妨げにはなりません。

Q 離婚届不受理申出をしていたのに、離婚届が受理されてしまうことはありますか。

A 申出をしていれば、戸籍係は届出人の本人確認を行ったうえで受理の可否を判断するため、無断での受理は基本的に防げます。ただし、万一偽造の届出が受理されてしまった場合は、離婚無効確認の調停・訴訟等の手続が必要になることがあります。

Q 離婚届不受理申出をした後、気が変わって離婚することにしました。どうすればよいですか。

A 市区町村役場の窓口で取下げの手続きをしたうえで離婚届を提出することもできますが、申出人本人が窓口で自分の離婚届を提出するのであれば、事前に取下げをしていなくても、離婚届は受理されます。

離婚の届出に関する手続きについてご不安がある方へ

相手に無断で離婚届を出されてしまう不安がある場合、離婚届不受理申出の手続きや、その後の進め方について整理いたします。まずは状況をお聞かせください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。実際の手続きは市区町村によって運用が異なる場合があります。具体的な対応については弁護士や本籍地の市区町村役場にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)