暴行で150万円、さらに離婚自体慰謝料300万円――合計450万円が認められた例

暴行で150万円、さらに離婚自体慰謝料300万円――合計450万円が認められた例 DV・モラハラ

「相手から暴力を振るわれて離婚を決意しました。こういう場合、慰謝料はどのくらいもらえるものなのでしょうか」というご相談をいただくことがあります。暴力を理由とする慰謝料と、離婚そのものを理由とする慰謝料は、別々に認められることがあります。東京地方裁判所平成25年7月30日判決は、悪質な暴行そのものへの慰謝料に加えて、離婚自体慰謝料もあわせて認められ、合計450万円という高額な結論に至った一例です。

事案の概要

原告が、婚姻中に被告から暴力を受けて負傷したことを理由に、慰謝料の支払いを求めた事案です。

暴行に至った経緯として、原告から離婚を求められたのに対し、被告は、原告から求められていた生活費を渡さないまま、原告に仕事を探すよう迫り、その中で暴行に及んでいます。当初は子どもを抱いている原告に対して暴行が加えられ、子どもを取り戻そうとした原告に対しても、蹴る、頭部を殴るといった暴行が続きました。さらに、頭髪を掴んで転倒させ、倒れた原告の首付近を踏みつけ、逃げようとした原告をリュックサックごと引き倒したうえ、首を絞めるという暴行にまで至っています。この暴行の結果、原告は救急搬送されるに至り、被告はこの傷害行為について、罰金30万円の略式命令を受けています。

裁判所の判断 暴行そのものへの慰謝料は150万円

裁判所は、暴行の原因や経緯、暴行行為の態様、負った傷害の程度に加えて、被告が刑事上も傷害罪で罰金の略式命令を受けていることなども踏まえ、この暴行による精神的苦痛について、慰謝料額を150万円と認めました。

この判断のポイントは、単発の暴行ではなく、生活費を渡さず仕事を探すよう迫る中で始まり、子どもを抱いた状態での暴行、抵抗する原告への執拗な暴行、首を絞めるに至る一連の行為が積み重なっていた点にあります。暴行の回数や期間だけでなく、どのような経緯・状況で、どの程度悪質な態様の暴行が行われたか、そして刑事処分の有無も、金額を左右する要素になっていることが分かります。

離婚自体慰謝料として、さらに300万円

裁判所は、これとは別に、被告の暴力や暴言、家出、大麻吸引などの行為によって婚姻関係が破綻し、離婚に至ったこと自体についても、独立した慰謝料(離婚自体慰謝料)を認めています。この離婚自体慰謝料を判断する際、裁判所は、150万円の慰謝料の対象となった本件傷害行為を明示的に除いたうえで、婚姻関係が破綻した原因や、婚姻期間中に原告が受けてきた精神的・肉体的苦痛、幼い子を抱えた状態で離婚せざるを得なくなったことなど、その他の事情を総合的に考慮し、離婚自体慰謝料として300万円を認めました。つまり、同一の精神的苦痛を二重に評価したものではなく、個別の暴行による損害と、その他の行為によって婚姻が破綻し離婚に至ったことによる損害とを、区別して評価した裁判例といえます。

これにより、暴行そのものへの慰謝料150万円と、離婚自体慰謝料300万円をあわせて、合計450万円の慰謝料が認められた事案となっています。暴力を理由に離婚する場合、暴行という個別の不法行為への慰謝料だけでなく、婚姻関係の破綻・離婚そのものに対する慰謝料も、事情次第では別立てで認められ得ることがよく分かる裁判例です。

※上記は判決の要旨をまとめたものであり、判決文そのものではありません。実際の事案の詳細や表現とは異なる場合があります。

実務上の意味・ここがポイント

①暴行そのものへの慰謝料は、暴行の回数や期間だけでなく、経緯や態様、傷害の程度、刑事処分の有無によって金額が左右されます。

②暴行による慰謝料とは別に、婚姻関係が破綻し離婚に至ったこと自体への慰謝料(離婚自体慰謝料)が、あわせて認められることがあります。

③この裁判例では、暴行への150万円と離婚自体慰謝料300万円が別立てで認められ、合計450万円という結論になっています。

④暴行が刑事事件(傷害罪など)として立件され、罰金や略式命令を受けている場合、その事実も慰謝料の金額を考える際の考慮要素になり得ます。

よくある質問

Q1 暴力の慰謝料と、離婚自体慰謝料は、必ず両方もらえるのですか?

A 必ず両方が認められるとは限りません。この裁判例のように、暴行という個別の不法行為と、婚姻関係破綻・離婚という結果の両方について、具体的な事情が積み重なっている場合に、両方が別立てで認められることがあります。

Q2 相手が刑事罰を受けていることは、慰謝料にどう影響しますか?

A この裁判例のように、傷害罪などで罰金や略式命令を受けている事実は、暴行の悪質性や、被害者が受けた恐怖・苦痛の大きさを裏付ける事情として、慰謝料の金額を考える際に考慮されることがあります。刑事手続の記録が残っていれば、資料として確認しておくとよいでしょう。

Q3 暴行の経緯や態様は、どのように証拠として残しておけばよいですか?

A 診断書や写真に加えて、いつ、どのような状況で、どのような暴行が行われたかを、できるだけ早いタイミングでメモや日記などに記録しておくことが有用です。刑事事件になっている場合は、その記録もあわせて確認しておくと、慰謝料請求の際の資料になります。

DVによる離婚・慰謝料についてご不安がある方へ

暴力を受けた経緯や態様を具体的に整理することは、慰謝料の金額の見通しを立てるうえでとても重要です。ご自身の状況を伺ったうえで、証拠の整理の仕方も含めてご提案いたします。おひとりで抱え込まず、まずはご相談ください。

※本コラムは、慰謝料制度についての一般的なご紹介を目的としたものであり、個別の事案についての法的助言ではありません。判例は個別の事案に対する判断であり、同じような事情であっても、必ず同じ結論になるとは限りません。具体的なケースについては弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)