調停や審判で面会交流の条件が決まったのに、相手が実際には応じてくれない――そうした場合の対処法として知られているのが「間接強制」です。もっとも、間接強制はどんな場合にも使える万能の手段ではなく、認められても実現しない限界があります。今回は、面会交流における間接強制の仕組みと、特に「金額」と「限界」という観点から、実務上押さえておきたいポイントを解説します。
間接強制とは
間接強制とは、調停や審判で定められた義務を相手が任意に履行しない場合に、家庭裁判所が「履行しない場合は1回につき○万円を支払え」といった形で金銭の支払いを命じることで、心理的なプレッシャーをかけて履行を促す手続です。
面会交流は、強制執行官が子を物理的に連れてくるような性質の義務にはなじまないため、不履行があった場合の実効性確保は、基本的にこの間接強制によることになります(ほかに家庭裁判所による履行勧告という制度もありますが、法的な強制力はありません)。
間接強制を申し立てるには、調停条項や審判の内容が、同居親(監護親)が何をすべきかを一義的に特定できる程度に具体的である必要があるとされています(最高裁平成25年3月28日決定)。この「特定性」がどこまで必要とされるか、実際の審判例でどのように判断されているかについては、「面会交流を拒み続けたら、審判はどうなる?――『いつ・どこで』まで具体的に定められた理由」で詳しく取り上げていますので、あわせてご覧ください。
間接強制金はどのくらいの金額になるか
間接強制金の金額は、個別の事案ごとに家庭裁判所が裁量で判断するものであり、一律の基準があるわけではありません。もっとも実務上は、金額が低すぎれば履行を促す効果が乏しくなる一方、高すぎれば同居親側の生活を過度に圧迫しかねないため、婚姻費用や養育費の月額などを一つの参考要素としながら、個別の事情に応じて金額が定められる傾向があるといわれています。実務上は、1回の不履行につき5万円程度が一つの目安とされることが多いようですが、同居親の収入状況や従前の経緯など、個別の事情によって増減します。
この点は事案ごとの差が大きいため、具体的な金額の見通しについては、個別の事情を踏まえて弁護士に相談されることをお勧めします。
間接強制にも限界がある
間接強制は万能ではありません。とりわけ問題になるのが、子ども自身が面会交流を拒んでいる場合です。
間接強制は、あくまで同居親(監護親)に対し、面会交流の実現に向けた行動を取らせるための制度です。そのため、子が一定の年齢に達し、自らの意思で明確に面会交流を拒絶しているようなケースでは、同居親がいくら協力的な行動を取ったとしても、子の意思自体を変えることはできない以上、間接強制の対象にはならないと判断されることがあります。実際に、名古屋高等裁判所令和2年3月18日決定も、こうした考え方を示しています。
どの年齢から「子ども自身の意思」が重視されるかについて一律の基準があるわけではありませんが、15歳前後が一つの目安として議論されることが多いようです。もっとも、15歳未満であっても、子の拒否の意思が明確である場合には間接強制が認められにくいとする見方もあり、この点はなお見解が分かれています。
実務上のポイント
間接強制は、面会交流の実効性を確保するための重要な手段ですが、金銭的な制裁をちらつかせて無理に面会交流を実現させることが、必ずしも子の利益にかなうとは限りません。経済的な負担を避けたいという動機だけで面会交流に応じている状態は、別居親との関係性そのものが改善しているとは言い難く、本来目指すべき「子にとって良好な親子関係の維持」からはかえって遠ざかってしまうことも指摘されています。
そのため実務上は、間接強制を見据えた具体的な条項をいきなり取り決めるのではなく、まずは柔軟な内容で合意し、子の状況を見ながら運用していくのが望ましいとされています。もっとも、合意や審判があったにもかかわらず同居親が合理的な理由なく履行しない場合に、どのような形で改めて申し立てていくべきかについては、前掲の関連記事で具体的な審判例を交えて紹介しています。
もっとも、これはあくまで一般的な傾向です。間接強制になじむ条項の内容や、間接強制金の金額、限界が認められるかどうかは、子の年齢や従前の面会交流の実施状況など、事案ごとの事情によって大きく異なります。
よくある質問
Q1. 間接強制金は、1回定められたら金額は変わりませんか?
A. 一度定められた金額がその後の事情変更によって当然に増減するわけではありません。収入状況の変化など、金額を見直すべき事情が生じた場合は、改めてその点を踏まえた申立てを検討することになります。
Q2. 間接強制を申し立てれば、必ず面会交流が実現しますか?
A. そうとは限りません。間接強制はあくまで金銭的な制裁によって同居親に履行を促す制度であり、子ども自身が明確な意思をもって面会交流を拒否している場合などは、対象にならないことがあります。
面会交流にご不安な方へ
面会交流の取り決めをしても、相手が守ってくれない――そうしたお悩みは少なくありません。将来、間接強制を見据えてどこまで具体的な条項にしておくべきか、既に合意や審判がある場合にどのような手続を取るべきかは、事案ごとに慎重な検討が必要です。面会交流の実施でお困りの方は、早めに弁護士へご相談されることをお勧めします。
※本コラムは、一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別の事案における結論を保証するものではなく、法的助言に代わるものでもありません。具体的な事案については、弁護士等の専門家にご相談ください。

