別居と同居を繰り返した夫婦、財産分与はいつの時点の財産をもらえるの?

別居と同居を繰り返した夫婦の財産分与の基準時 財産分与

「一度は別居したものの、やり直そうと思って同居に戻った。でも結局うまくいかず、また別居することになった」——このように、別居と同居を繰り返してきた夫婦は少なくありません。この場合、財産分与の基準時は、最初の別居日、それとも最後の別居日、どちらになるのでしょうか。ここでは、同居と別居を繰り返しているケースにおける基準時の考え方を紹介します。

原則:一時的に自宅へ戻った程度なら、最初の別居日が基準時

同居と別居を繰り返してきた夫婦の場合、一律の決まった扱いがあるわけではなく、個々の事案ごとに、それぞれの別居がどれくらいの期間に及んだか、何のための別居だったか、そして別居中も夫婦としてのやり取りがどの程度残っていたかを踏まえて、実質的に協力関係が失われていたと評価できるかどうかを見ていくことになります。

荷物の受け取りや子どもとの面会のために、別居中に一時的に自宅へ戻ったという程度であれば、そのことによって協力関係が復活したとは評価されず、最初に別居を始めた日が基準時になるのが原則です。これに対して、ある日を境にきっぱり別居に踏み切ったわけではなく、夫婦関係が少しずつ冷え込んでいく中で、自宅に顔を出す頻度がじわじわと減っていき、やがて誰の目にも「もう戻らない」と分かる状態になった、というケースもあります。このように段階的に距離ができていった場合は、完全に足が遠のいた最後のタイミングを基準時とする扱いが多いとされています。また、別居した後もお互いの家を行き来していたり、生活費を一つの財布から出し合うなど家計が事実上つながったままだったりする間は、協力関係がまだ失われていないと評価されやすく、そのつながりが実際になくなって初めて基準時が訪れると考えられます。

別居期間が長ければ、最初の別居時点に基準時が固定されることがある

問題になりやすいのは、いったん別居した後、関係修復のために本格的に同居へ戻り、その後、再び別居に至ったというケースです。このような場合、最初の別居がそれだけ長く続いていたのであれば、その時点で夫婦としての協力関係はいったん本当に途切れていたと評価できます。そこで、その後にやり直して同居した期間や、再び別居してからの期間も含めて、最初に別居した時点を基準時として固定し、それ以降に増えた財産はまとめて対象から外すという考え方が採られることがあります。いわば、最初の別居によっていったん「リセット」されたものとして扱うイメージです。

実際に、13年間同居していた夫婦が3年間別居した後、いったんやり直すために同居し、その2年後に再び別居したという事案で、最初の同居が終わってから再び同居を始めるまでの3年間という別居期間の長さを重視し、この最初の別居時点を基準時としたうえで、そこから増えた財産は対象に含めないとした実務上の解決例もあります。別居していた期間が長ければ長いほど、協力関係が本当に途切れていたと評価されやすくなり、基準時が早い時点に固定されやすくなると考えられます。

短期間の別居であれば、協力関係の継続が認められることもある

反対に、同居期間中に生じた別居がごく短期間にとどまり、その間も夫婦としての実質的なつながりが保たれていたと評価できるような場合には、その別居によって協力関係が途切れたとは扱われません。同居期間3年の夫婦が、その途中で2週間程度別居した事案について、全体としてみれば夫婦の経済的協力関係は継続していたと評価し、協力関係の中断を認めなかった裁判例もあります(広島高等裁判所岡山支部平成16年6月18日判決)。

同じ「同居と別居を繰り返す」ケースであっても、結論はいわば正反対に分かれます。中断(別居)がごく短ければ、協力関係は途切れていなかったものとして扱われ、基準時はその後もずっと後ろ、つまり最終的に別居した時点まで動きません。逆に、中断(別居)が長期に及べば、その最初の別居の時点で協力関係は本当に途切れていたと評価され、基準時はそこで固定されてしまい、それ以降に増えた財産は対象に入らなくなります。中断期間の長さ一つで、基準時が「最後の別居まで動かない」か「最初の別居で止まる」かが分かれるということです。

実務上の意味・ここがポイント

ここまでの内容を整理すると、伝えたいことはシンプルです。①同居と別居を繰り返しているケースでは、別居の期間・目的・別居中の交流状況などを総合的にみて、協力関係が実質的に失われていたかどうかを判断します。②一時的に自宅へ戻った程度であれば、最初の別居日が基準時になるのが原則です。③別居していた期間が長期に及び、協力関係が本当に途切れていたと評価できる場合には、その最初の別居時点で基準時が固定され、その後にやり直して同居していた期間も含め、それ以降に増えた財産は対象から外れます。④逆に、別居していた期間がごく短く、その間も夫婦としての実質的なつながりが保たれていた場合には、協力関係の継続が認められ、別居がなかったものとして扱われます。そのため、基準時は、最終的に別居した時点まで先送りされます。

だからこそ、別居と同居を繰り返してきた方は、それぞれの別居・同居の期間、その間の連絡状況や生活費のやり取りを、できるだけ時系列でメールやライン等の記録とともに整理しておくことが重要です。特に、関係修復のために同居に戻った期間がどのくらい続いたのかは、基準時を左右する重要な要素になりますので、当時のやり取りが分かる資料をできる限り残しておくことをお勧めします。

よくある質問

Q 別居中に、荷物を取りに一度だけ自宅に戻りました。これによって基準時が変わってしまいますか。

A 荷物の受け取りや子どもとの面会など、一時的に自宅へ戻った程度では、協力関係が復活したとは評価されず、基準時が変わることはないと考えられます。最初に別居を始めた日が基準時になるのが原則です。

Q 一度別居した後、やり直そうと同居しましたが、結局また別居しました。基準時は最初の別居日と最後の別居日、どちらになりますか。

A 最初の別居がどれくらい長く続いていたかによって考え方が変わります。その別居期間が長期に及び、協力関係が本当に途切れていたと評価できる場合には、最初の別居時点で基準時が固定され、その後にやり直して同居していた期間も含め、それ以降に増えた財産は対象から外れます。

Q 別居していても、週末は一緒に過ごしたり、生活費を一つの口座で管理したりしています。この場合も基準時は最初の別居日になりますか。

A お互いの家を行き来したり、生活費を一つの財布から出し合うなど、家計が事実上つながった状態が続いている間は、協力関係がまだ失われていないと評価されやすく、そのつながりが実際になくなった時点で、ようやく基準時が訪れると考えられます。

別居と同居を繰り返してきた場合の財産分与の基準時についてご不安がある方へ

これまでの別居・同居の経緯や、その間の連絡状況、生活費のやり取りなどを伺ったうえで、どの時点が基準時になりそうか整理いたします。まずは状況をお聞かせください。

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。基準時の判断は、別居・同居に至る経緯や期間、生活実態など、個別の事情によって異なり、必ずこのとおりになるとは限りません。具体的な対応については弁護士にご相談ください。

執筆者:益子大悟(中目黒さくら法律事務所 代表弁護士/第一東京弁護士会所属)